預貯金は増えないけど減らないから投資をするよりマシと考える人も多いです。ただ、私たちが銀行などに預けているお金の価値は年々減っていることに気づいていません。一体、どういうことなのか。今回はお金の価値について考えます。
年2%の物価上昇が目標
安倍晋三政権(当時)が掲げていたアベノミクス政策の1つに「物価の上昇」がありました。中央銀行の日本銀行(日銀)と共同で「年間2%の物価上昇を目標とする」ものです。
実際にはデフレが続いて、目標達成はなかなか厳しいと見られていますが、もし今後年2%の物価上昇が実現すればどうなるのか。
例えば自分の銀行口座に100万円のお金が入っているとします。
それが
10年後:約80万円
20年後:約67万円
30年後:約55万円
なんと約30年後には現在の半分にまで価値が下がってしまう計算です。
- えっ?100万円のお金が没収されるわけじゃないよね?
- なんで55万円に減るの?銀行が手数料で抜いてるの?
などと思われるかもしれませんが、見た目は100万円で変わらず、もちろん銀行が勝手に抜き取るわけでもありません。
物価とお金の価値の関係
では、なぜ100万円が55万円などに「変化」するのか。
これはインフレ(物価の上昇)が発生するためです。
物価が上昇すると、お金の価値が下がります。
同じ1万円札を出しても買える量が減ってしまうからです。
今の物価はどのくらいでしょうか。
例えば
りんご1個:100円
ペットボトルの水:150円
牛丼屋さんの牛丼並盛:400円
ラーメン:800円
くらいで買えますよね。
これがインフレが発生すると、モノやサービスの値段が上がります。
インフレ10倍になると
りんご1個:1,000円
ペットボトルの水:1,500円
牛丼屋さんの牛丼並盛:4,000円
ラーメン:8,000円
を払わないと買えなくなります。
もし100倍になると
りんご1個:10,000円
ペットボトルの水:15,000円
牛丼屋さんの牛丼並盛:40,000円
ラーメン:80,000円
牛丼並盛が4万円、ラーメン一杯が8万円とは、今の感覚からすると恐ろしい話ですが、このような状態になる可能性もゼロではありません。
もし、あなたの貯金が100万円ある場合、今の物価だとりんごは1万個買えますが、物価100倍になると100個しか買えません。
見た目のお金は100万円で変わらないのに、買える個数が全然違ってくるわけです。
もし今と同じように、りんごを1万個買おうと思ったら、物価100倍になった世界では1億円用意する必要があります。
私たちのお金は目減りしている
見た目は「100万円」で変化がなくても、物価が上がると買える量も減るので、実質、自分たちのお金が目減りしているのと同じです。
いきなり物価100倍にならなかったとしても、冒頭で説明したように、国や日銀はインフレを目指しているのは事実です。
国や日銀がインフレを目指している以上、「今後もお金の価値が下がっていきますよ」と言われているようなもの。
何もせず何も考えず、ただ銀行等にお金を置いておくだけでは、知らない間にじわじわ目減りしていくのを見ているだけになってしまいます。
仮に年2%のインフレに耐えようと思ったら、2%以上の資産を作る、お金を増やす必要があります。
会社に通勤して給料をもらう会社員(サラリーマン)の人も多いと思いますが、収入が給料のみの場合、年2%以上の昇給、給料増を達成しなければなりません。
では、毎年2%以上ずつ給料が増え続ける会社はあるのでしょうか。
もちろん、なかにはあると思いますが、ほとんどの会社は給料が上がるどころか下がる可能性のほうが高い。
コロナ禍の影響で、給料は下がり、ボーナス(賞与)はカットされるなど、鉄道や航空業界など、昔は華形と呼ばれた職業も例外なく苦境に立たされています。
緊急事態宣言などで狙い撃ちにされた飲食や観光、百貨店、映画館やテーマパークなどのエンターテイメント業界などもそうですね。
どのような業界で働いていたとしても、生涯安心、安全、安泰、勝ち組といったものは、この先は全くありません。
大幅な給料増加は見込めない、むしろ下がる可能性が高い以上、給料と預貯金のみに頼っていると、資産は実質的にどんどん目減りしていきます。
資産を減らさないために
預貯金のみに頼っていると、資産は実質的にどんどん目減りしていく以上、本業の給料(労働)や預貯金以外でお金を増やす方法を取り入れていく必要があります。
つまり「運用」の力を積極的に導入する必要があります。
これからは自分だけが働くのではなく、お金にも働いてもらう時代です。
- 投資は怖い、危ない、怪しい
- よく分からない、難しい、めんどくさい
- 投資はお金減るかもしれないんでしょ?そんなの絶対に嫌だ
- 投資?楽して稼ぐなんて卑怯だ
などと言っている暇はありません。
今回説明した通り、お金が減るかもしれないのは預貯金も同じです。
それと、あまり知られていませんが、預貯金も立派な投資の1つです。
「投資や資産運用は怖い、危ない、怪しい」などと思い込んだまま何もせず、ただひたすらせっせと貯金だけして、資産を減らしていくか
リスクもとりながら、労働や預貯金以外でお金を増やす方法を取り入れていくか
これからはますます知っているか知らないかで格差はどんどん広がっていきます。